ポリソルベートが化粧品に使われる理由とリスク

ポリソルベート20は安全?化粧品に使われる理由とリスク

ポリソルベートとは

ポリソルベートの原材料は、ソルビトールと呼ばれる糖アルコール。天然の果物などにも含まれていて、本来は人体や環境にとっては無害な物質です。

しかし、化粧品で使われるポリソルベートはソルビトールを次のように加工したもの。

まず、ソルビトールを脱水。ソルビタンが作られます。そのソルビタンに酸化エチレンを加えて化学反応を起こします。「エトキシル化」と呼ばれる工程です。この工程で、20個の酸化エチレンを用いて処理されたものが「ポリソルベート20」です。

処理方法の違いで、ポリソルベートの後ろに続く数字が変わります。

ポリソルベート20が化粧品に配合される3つの理由

ポリソルベート20が化粧品に配合される目的は、質感や感触、香りの向上。つまり、界面活性剤、乳化剤、香料の役割がある成分ということです。

1. 洗浄成分として

スキンケア製品で洗浄成分として配合される界面活性剤。油脂を脱脂・乳化し、汚れを浮かせて洗い流す働きがあります。ポリソルベート20も界面活性剤として洗顔料やクレンジング、ボディソープに配合されます。それにより、肌や毛穴に蓄積した油分や汚れなどを引き寄せて洗い流す効果が期待されます。

2. 乳化剤として

ポリソルベート20には乳化剤としての働きもあります。
ほとんどの化粧品には水と油の両方が含まれています。しかし本来、水分と油分は混ざることはありません。市販のドレッシングが分離しているるのもそのため。

でも、化粧品では分離することなく混ざった状態がキープされています。これが乳化剤による効果。乳化剤を配合することで水と油が混ざり合い、その状態を安定させたまま維持することができるのです。

ポリソルベート20は合成の乳化剤として、次のような多くの化粧品で使われています。

  • 化粧水・乳液
  • フェイスクリーム
  • 美容液
  • シートマスク・パック
  • 化粧下地
  • ファンデーション
  • フェイスパウダー
  • チーク・アイシャドウ
  • 口紅

3. 香りをつけるため

ポリソルベート20は香料成分にもなります。最初に書いたとおり、ポリソルベートの原材料はリンゴ、ナシ、モモ、プルーンなど天然の果物に含まれるソルビトール。それらの果物が持つ甘い香りが活用されているのです。

ポリソルベートには香料としての機能もある

ポリソルベート20の安全性

ポリソルベート20を含むすべてのポリソルベートは、基本的には安全と評価されています。ただし同時に、次のような警告も。

経皮吸収する成分との併用リスク

評価の中で、ポリソルベート20、ポリソルベート65、ポリソルベート80は他成分の吸収を促進する可能性が示されました。そのため、これらを配合した化粧品の処方には次のような注意が必要とされています。

  • 経皮吸収しないことを示す安全性データがある成分を併用すること
  • 経皮吸収が懸念される成分を一緒に配合する場合には、処方に注意をすること
  • 乳幼児に使用する可能性がある化粧品では特に注意をすること

不純物の混入・残留

ポリソルベートには不純物の混入・残留の可能性があることも指摘されています。不純物とされるのは、1,4-ジオキサンと酸化エチレン。先述したとおり、酸化エチレンは製造過程で使用される物質です。

化粧品に配合する前に、ポリソルベートからこれらの不純物の混入が制限されるよう、必要な管理を継続する必要があると安全性評価の際に強調されました。

残留農薬の可能性

原材料が天然の果物であるため、原料であるココナッツや果物に残留農薬の懸念があると記されています。同様に、重金属についても懸念が。
そのため、製造工場には引き続き適正製造基準に準拠させ、これらの不純物残留に対応するべきだとされています。

ポリソルベートに残っているかもしれない毒性物質

一般的には安全とされているポリソルベート。しかし、上述したように不純物の混入と残留の可能性があります。不純物には下記のようなリスクが懸念されていることから、ポリソルベートを避ける人もいます。

酸化エチレン

先述したとおり、ポリソルベートを作る際のエトキシル化という工程では酸化エチレンが使用されます。この酸化エチレンは発がん性のほか、神経障害や皮膚炎の懸念がある物質。最終的に作られたポリソルベートに残留している可能性はゼロではありません。

1,4-ジオキサン

酸化エチレンを加えるエトキシル化で、1,4-ジオキサンという物質が発生する可能性があります。この1,4-ジオキサンには発がん性が疑われていいます。また、皮膚から簡単に浸透することも知られています。

1,4-ジオキサンを除去するには、ポリソルベートを化粧品に配合する前に精製する必要があります。アメリカにおいては、化粧品における1,4-ジオキサンの残留量はを最大で10ppmにすることを規制ができました。しかし、日本ではまだ具体的な規制は設けられていません。

毎日使うものだから

たとえポリソルベートに上記のようなリスクがあっても、たまにしか使わないのであれば過剰に心配する必要はないかもしれません。

でも、ほとんどの人は一つの化粧品だけ使っているわけではないはず。多くの人が10種類以上の化粧品を1日に数回、そしてほとんど毎日使っているのではないでしょうか。

そのうち複数の製品にポリソルベートが入っているとしたら。思っているよりも、実は有害物質に接触している回数も量も多い可能性があります。

毎日使うものだからこそ、一度、使っている化粧品の成分を確認してみてもいいかもしれませんね。

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