化粧品成分の経皮吸収と浸透の違い

化粧品成分の経皮吸収と浸透の違い

複雑な経皮吸収の仕組み

さまざまな物質が皮膚から吸収されると言われています。しかし、化学物質などの皮膚吸収の仕組みは単純ではありません。どんな成分でも同じように吸収されるわけではなく、体内にとどまる量や時間、体内での反応にも違いがあります。

また実際には、化粧品成分の経皮吸収の計測方法はまだ不安定。成分ごとの確実な経皮吸収性を測ることが難しいのが実情です。

少しずつ安定した計測方法が提案されています。それでも、肌の状態や使用状況の影響を受けやすいため、今すぐ確実に経皮吸収のリスクを予測できるわけではなさそうです。

その上で、化粧品の経皮吸収について今わかっていることをまとめました。

肌への浸透との違い

経皮吸収は恐ろしい。そんな人でも、化粧品成分が肌にしっかり浸透することを望んでいます。
肌に成分が浸透することと経皮吸収はどう違うのでしょうか?

肌への浸透とは

物質が肌の角質層(皮膚の外側の層)を通過して、皮膚の深層部へと進むこと

経皮吸収とは

物質が血流に侵入すること

浸透はあくまで皮膚にとどまる一方、経皮吸収は血流にのって体内に侵入するということですね。

化粧品成分の経皮吸収とは血流に侵入すること

スキンケアでは、成分が肌に浸透することは理想的とされています。なぜなら、肌の深くまで入ることでうるおいを与え、コンディションを整えるための最高の働きを発揮できるから。

一方、深くまで浸透した成分は洗い流すことができません。では、浸透した成分は最終的にすべて血流に侵入するのでしょうか?答えはNo。物質の大きさや条件がそれぞれ異なるため、すべてが経皮吸収されるとは限りません。

経皮吸収の3つの経路

物質が皮膚を経由して、血流に侵入するまでの経路は3つあります。

細胞間吸収

角質層の細胞と細胞をつなぐ「接着剤」を経由して吸収されます。この「接着剤」は細胞間脂質といい、セラミド、コレステロール、コレステロールエステル、脂肪酸で構成されています。

脂質は油性。水とはうまく混ざりません。つまり、水性成分よりも油性成分のほうがこの経路で吸収される可能性が高いということです。

細胞内吸収

二つ目の吸収経路は細胞内吸収。皮膚の一番外側には角質層があります。この角質層は役目を終えた「死んだ細胞」が15層〜20層になってできています。

成分が非常に小さな分子でできている場合、この層を通過して吸収されます。

毛穴や毛包からの吸収

毛穴や毛包は、表皮を通り抜け、血管が皮膚に栄養を与える真皮まで達しています。皮膚表面の約0.1%しかない毛穴や毛包は、経皮吸収の主な経路にはなりません、しかし、毛包経由で吸収されやすい物質もあります。

経皮吸収されやすくなる条件

化粧品成分が肌に吸収されるかどうかは、肌の状態や接触時間も影響します。

角質層細胞の一部が剥がれ落ちるなどして肌がダメージを受けると、角質層の状態が乱れます。すると浸透性が高まり、肌への吸収率が大幅に高まる可能性が示されています

これは、ニキビアトピー、乾癬などの皮膚トラブルを抱えたり、肌が弱っている人には特に重要。なんらかの懸念がある成分による潜在的な副作用のリスクが高まる可能性を意味しているからです。

また、化粧品を使う頻度や時間、量も経皮吸収に影響する要素。1日に何度も使ったり、一度に大量に使用すると吸収率が高くなる可能性があります。

経皮吸収される物質

天然の精油や合成香料は油性の小さな分子。そのため、一般的に細胞間吸収によって経皮吸収される可能性があるとされています。

またそれは、その他の油性成分も同じ。細胞間脂質や毛包を通過するため、水性成分よりも皮膚に吸収される可能性が高いと言えます。

天然オイルの皮膚吸収に関する研究 では、オイルマッサージを受けた赤ちゃんの血液が調べられています。

ベビーマッサージでオイル成分が経皮吸収されることも
ベニバナ油とココナッツオイルで1日4回5日間、新生児にマッサージ。その結果、ベニバナ油を使った赤ちゃんは血中の不飽和脂肪酸の濃度が高く、ココナッツオイルでは飽和脂肪酸の濃度が高かったことが報告されています。
つまり、体に塗ったオイルが、赤ちゃんの脂肪酸構成を変化させる可能性が示されたのです。

また、化粧品を使う10代の女性20人を対象にした米国の調査。そこでは対象者の血液や尿から下記の成分が検出されたことが報告されました。

これらは発がん性やホルモン作用が疑われている成分。身体や生殖器がまだ成長過程にある女性に対して、長期的な影響を与える可能性があります。

経皮吸収されたらどうなるか

皮膚から吸収された化学物質がどうなるか。どのぐらいの期間体内に留まり、どのように作用するのかはさまざま。そして、まだ判明していないこともたくさんあります。

多くの場合、肝臓や肺、腎臓などを通して比較的スムーズに体外に排出されるとされています。一方で、骨や脂肪の中に数年間留まるものも。特定の臓器や組織、体内に侵入した他の物質と接触することで毒性を発揮する可能性もあります。

また、化学物質そのものだけでなく、その人の年齢、性別、遺伝的背景、過去の暴露歴、食生活などが影響する可能性も。多くの物質がどんな条件で、どの程度有害かを明確に示すデータを得ることは、非常に困難で複雑なのです。

化粧品の全成分表を読むだけでは、経皮吸収による正確な影響はわからないことが多いかもしれません。
「疑わしいものは選ばない」
そんな基準で選択をしてみてもいいかもしれないですね。

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