フタル酸エステルと子宮筋腫の関連
2023年1月、フタル酸エステルによって子宮筋腫が大きくなる可能性について、ナショナル・ジオグラフィックが掲載しました。
そんな物質は聞いたことがないという人もいるかもしれません。
でも実は、身の回りのさまざまなものに含まれています。そして、体内のホルモンの働きを乱したり阻害する可能性が長年指摘されているのです。他にも、生殖・発達毒性のリスクもあるとされています。
健康への影響が心配されるため、フタル酸エステルの使用は各国で厳しく規制されています。
それなのに今でも、化粧品に使われている可能性があるのです。
フタル酸エステルが含まれるもの
フタル酸エステルは、下記のような身の回りのさまざまなものに含まれています。
- プラスチック製のおもちゃ
- 食品の包装紙
- 車の内装
- 合成皮革(人工レザー)
- 壁紙
- 天井材・床材などの建材
そして、こんな化粧品にも。
- マニキュア
- ヘアスプレー
- アフターシェーブローション
- クレンジング
- シャンプー
化粧品にフタル酸エステルが使われる理由
もともとフタル酸エステルはプラスチックの耐久性を高めるための物質です。蒸発しにくく、プラスチックの表面に塗布すると表面同士がくっつくことがありません。
そんな特性は化粧品に配合される時にも活かされます。
化粧品では溶剤や安定剤、香水として使われますが、特に多く使われるのは爪のマニキュアやヘアスプレー。
フタル酸エステルを使うことでマニキュアは固まってはがれにくくなります。また、ヘアスプレーは髪にしなやかな皮膜を形成し、ゴワつきを防ぐことができるのです。
非常になめらかな質感を作り、化粧品成分としても機能性は抜群なのですね。
ただ、最初に書いたとおり、健康へのリスクがあると考えられているのです。
健康への懸念
フタル酸エステルによる健康への懸念は一つではありません。どんなことが心配されているのか、詳しくみてみましょう。
生殖能力や胎児に影響
ヨーロッパの欧州化学機関欧州委員会は、下記のような懸念を表明しています。
私たちは食品、皮膚、空気を通してフタル酸エステルにさらされています
フタル酸エステルの中には生殖能力や胎児にダメージを与えたり、体内のホルモン系を阻害する可能性がある種類も存在します。
特に、男児の性的発達に影響を与え、成人の不妊症につながる可能性があります。
男児以外では、妊婦や幼児がもっとも影響を受けやすいグループであることがわかっています。
また別の研究では、母乳に含まれたフタル酸エステルで男の赤ちゃんのホルモンレベルが変化することも示されています。
精子のDNA損傷
男性の尿に含まれるフタル酸エステルの代謝物の濃度と精子の質に関連性がある可能性もあります。
アメリカの不妊治療クリニックに通う379人の男性を対象にした調査では、代謝物の濃度が高いほど精子のDNAが損傷し、運動性が失われていることがわかったのです。
つまり、フタル酸エステルとの接触が増えれば触れるほど、不妊につながる可能性があるかもしれないということです。
ちなみに、女性の生殖器系への影響は男性よりも低いとされています。とはいえ、女性への影響を認めた研究もいくつか存在しています。
例えば、フタル酸エステルに慢性的に接触したメスのラットは、性ホルモンが変化。胎児死亡の可能性が増加したことが報告されています。
上記のような重篤な病気以外にも、アレルギーや喘息のリスクを高めたり、神経発達に影響を与える可能性も示唆されています。
安心して使える化粧品を選ぶために
アメリカのFDAによると、フタル酸エステルの化粧品への使用は年々減っているようです。
ですが、香料での使用はまだまだ一般的。
それに他の化粧品での使用も禁止されているわけではありません。
化粧品では下記のような種類が使われることが多いため、これらが使用されていないかを確認すると安心です。
略称 | 名称 | よく使用される化粧品 |
DBP | フタル酸ジブチル | マニキュア |
DMP | フタル酸ジメチル | ヘアスプレー |
DEHP | フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | つけまつげ用接着剤 |
DEP | フタル酸ジエチル | 香料 |
ただし、香料には要注意。
どんな物質を何種類使っても「香料」とだけ記載すればOK。そのため、フタル酸エステルが含まれていても全成分表に記載がない場合が大半だからです。
気になる人は、無香料の化粧品を選ぶのが安心かもしれません。
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