化粧品成分のトリクロサンとトリクロカルバンは安全?

化粧品のトリクロサンとトリクロカルバンは安全?

売られている化粧品はすべて安全?

「立派なお店で売られているから」
「有名な人が紹介していたから」

残念ながら、そんな化粧品でも絶対に安全とは言い切れません。

化粧品を使用することによる長期的な影響は、発売された後あるいは何年も経ってから解明されることがあるからです。実際、国から販売許可を受けた医薬部外品の化粧品で肌トラブルが急増し、回収騒ぎになったケースも。

発売後に肌トラブルで回収になった化粧品も

この記事で紹介する「トリクロサン」と「トリクロカルバン」という成分も同じ。これらが配合された抗菌石けんが世界中で人気になった後、その安全性が問題視されるようになったのです。

一体何があったのでしょうか?

トリクロサンとは?

トリクロサンは、さまざまな抗菌石けんや洗剤、消臭剤、歯磨き粉、化粧品などに使われる抗菌剤。当初は医療従事者が使う手術前の洗浄剤として開発されたそう。
細菌やカビを殺菌し臭いを防ぐことから、キッチン用品や化粧品など多くの消費者向け製品に使われるようになりました。

トリクロカルバンとは?

トリクロカルバンも1950年代に使われ始めました抗菌剤。石けんやボディソープ、衣類、カーペット、プラスチック、おもちゃなどに広く使われています。

トリクロサン配合の抗菌石けんは清潔?

インフルエンザや感染症への心配から、一般の人の衛生意識は年々高まっています。

そんな中、2010年ごろから抗菌石けんの人気に火がつきました。そこで、医療従事者用だったトリクロサンとトリクロカルバンの強い抗菌作用に多くのメーカーが着目。「普通の石けんよりも清潔に!」といったうたい文句で、これら抗菌剤を配合した薬用石けんが続々登場。たちまち世界中で流行しました。

ところが2005年。米国FDAはトリクロサンやトリクロカルバンを含む抗菌石けんの効果と安全性を示す証拠が認められないと公表

米国FDAは抗菌石鹸の安全性と効果が認められないと販売停止の措置

その後、2016年にトリクロサンなどの19成分を含む抗菌石けんの販売を1年以内に停止する措置が取られます。続く2017年には、これらを含む24成分を配合した抗菌石けんは、事前の承認を得られない限り販売できないと結論づけられました。

なんと、抗菌石けんには意味がなかったのですね。

日本におけるトリクロサンの規制は?

日本でも人気だったトリクロサンやトリクロカルバンを配合した抗菌石けん。たくさんの種類が薬用石けんとして販売されていたことを覚えている人も多いのでは?

ところが、アメリカでの抗菌石けん販売禁止の流れをうけ、日本にも変化が。

2016年、厚生労働省によって薬用石けんの使用成分の切り替えが促されたのです
ただし、日本の場合はメーカーに対する「お願い」のみ。法的義務がある規制にはなっていません。

トリクロサンにひそむ他のリスク

内分泌かく乱作用

トリクロサンの内分泌かく乱性について、度重なる検証が行われています。2009年の研究では甲状腺ホルモンの濃度を低下させることが示されました。
また、EUでは内分泌かく乱性リスクを考慮した配合規制が設けられています。

抗生物質が効きにくくなるかも

2000年以降、多くの研究でトリクロサン耐性菌が発見されています。トリクロサンの日常的な使用により抗生物質や抗菌薬に耐性を持つ細菌が増える可能性があるのです。
つまり、一部の薬が効きにくくなる可能性があるということです。

体内に蓄積する

トリクロサンは人体の脂肪組織に蓄積することがわかっています。
ある研究では、5件の母乳サンプルのうち3件からトリクロサンが検出されたとされています。
また、2005年のWWFによるレポートでは新生児の臍帯血(へその緒の血)からも検出されたことが報告されています。

トリクロカルバンにもある他のリスク

トリクロカルバン自体には内分泌かく乱作用はないとされています。
しかし体内にある女性ホルモンのエストロゲンや男性ホルモンのテストステロンを増加させる可能性があることが示されています。

トリクロカルバンは内分泌かく乱性も指摘されています

一般的に内分泌かく乱物質は体内のホルモンの動きを真似して、バランスを乱すもの。しかしトリクロカルバンはそれとは異なる珍しいホルモンかく乱作用があるかもしれないというのです。

水の生き物への影響

トリクロサンとトリクロカルバンには強い殺菌力があります。そのため、排水後は、藻類や魚類などの水の生き物の暮らしや命に影響を及ぼしています

水中に蓄積することから、トリクロサンが魚や他の水生生物に高レベルで蓄積していることを示した研究もあります。

トリクロサンとトリクロカルバンの現状

日本

上述した通り、2016年にメーカー各社に対して厚生労働省から自主規制要請がありました。それ以降、薬用石けんおよび化粧品への使用例は激減しています。

ただし、法律で使用や販売が禁止されているわけではありません。化粧品には下記の濃度までであれば配合可能です。

  • トリクロサン:0.1%
  • トリクロカルバン:0.3%(ただしシャンプーなど洗い流す化粧品への配合規制はない)

米国

抗菌効果を謳う場合は事前にその効果を示す証拠の提出が必要。FDAが認めた場合のみ販売可能となっています。

ただし、この申請・許可が必要なのは抗菌効果を謳う場合のみ。一般の化粧品に配合が禁止されているわけではありません。

EU

  • トリクロサン:ボディローションを除き、0.3%まで配合可能(ただし生後半年未満の子供への使用はNG)
  • トリクロカルバン:0.2%まで配合可能(ただし生後半年未満の子供への使用はNG)。シャンプーなど洗い流す化粧品の場合は1.5%まで安全としています。ただし、マウスウォッシュへの使用および6歳未満の子どもが使用する歯磨き粉への使用は安全ではないとしています。

 

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