感作とは
感作とは、人が食物や物質に対してアレルギー反応を出すようになる過程の始まり。人の免疫系が、その食物や物質を「怖いもの」と間違って認識することで起こります。
一度「怖いもの」として認識してしまうと、その後、その食物や物質に接触するたびにアレルギー反応が出るようになります。
同じアレルゲンに触れても、すべての人がアレルギーを発症するわけではありません。同じように触れていても、まったくアレルギー反応が出ない人もいます。
しかし化粧品でアレルギーを発症する場合、皮膚感作がそのスタートとなることがほとんどです。
皮膚感作の原因
感作は、食べ物を食べて起こるだけではありません。化粧品や軟膏などが皮膚に触れることで感作されることもあります。
例えば、皮膚トラブルのある乳児の肌にピーナッツ油が配合されたオイルやクリームを塗ると、ピーナッツアレルギーを発症するリスクが高まる可能性があります。これは、13,971人の幼児を対象にした調査で判明しました。
感作のリスクが最も高いのは、親や兄弟など家族にアレルギーがある子供でした。
また、ピーナッツだけでなく、オート麦アレルギーや小麦アレルギーも、同じようにして発症することが報告されています。
皮膚感作性と刺激性の違い
敏感肌用とされる化粧品は、一般的に肌に刺激になりにくい成分を使って作られています。しかし、刺激が少ない成分だからといって、皮膚感作が起こらないわけではありません。
つまり肌に刺激がなく「優しい成分」でも、皮膚に触れることで感作する可能性があるということです。
肌刺激と皮膚感作は次のような症状が特徴。症状が同じかとても似ているため、同じものだと誤解されていることもあります。
- 肌が赤くなる
- かゆみ
- かゆみがある乾燥
- 発疹
- 皮が剥ける
- 上記の複数の症状の同時発症
皮膚感作と肌刺激、どちらも「接触性皮膚炎」と呼ばれます。しかし、生理学的には皮膚感作性と刺激性はまったく異なるものなのです。
皮膚刺激性とは
「皮膚刺激」とは、表皮細胞が一時的に傷つくこと。化粧品などに含まれる成分などに肌が触れることで引き起こされます。そのため、塗った場所に症状が現れます。
例えば、ある界面活性剤が配合された化粧品を使った後、塗ったところが赤くなり、かゆくなった。そんな時は、皮膚刺激による症状だと考えられます。
同じ物質に対して敏感に反応する人もいれば、そうでない人もいます。でも刺激を感じる可能性は誰にでもあります。
また、塗る場所によって症状の種類や度合い、持続時間が異なる場合も。
そして、その物質との接触がなくなれば、症状は消えて治ります。
皮膚感作とは
一方、「皮膚感作」は炎症性の免疫反応。アレルギー性接触皮膚炎とも呼ばれます。ある物質に触れた時に起こり始めます。
肌に刺激を感じる場合もありますが、その時すぐには自覚症状がないことも。製品や成分の影響で、身体の免疫系が暴走することによって引き起こされるアレルギー反応だからです。
繰り返し同じ物質に触れることで、最終的にアレルギー反応が引き起こされるのです。そのため、長年いつも使っていた化粧品で、ある日突然アレルギーを発症する可能性もあるのです。
皮膚感作によってアレルギー反応が出るのは、一部の人にだけ。でも、一度感作されてしまうと同じ物質には毎回アレルギー反応が出るようになります。
アレルギー性接触皮膚炎は誘導期と誘発期を経て発症します。
- 誘導期:その物質を含む製品を使った後、免疫系で特殊なタンパク質が形成される
- 誘発期:その後、同じ物質に触れたとき、そのタンパク質が反応してアレルギー症状を起こす
症状が出るのは、塗った場所だけとは限りません。顔に塗った後、全身に症状が出ることもしばしば。また、ある物質に感作した人は似た物質にも反応してしまう可能性があります。
皮膚感作性の評価は義務
化粧品はほぼ毎日塗るもの。その見えないリスクを測ることはできません。
そのため、すべての化粧品成分において皮膚感作性の評価が義務付けられています。皮膚感作性が高い場合、アレルギーリスクも高くなります。そのため、評価結果によっては、その成分の配合量や濃度に規制が設けられることもあります。
しかし、評価で安全とされている成分でも、思わぬアレルギー反応が生じる可能性はゼロではありません。
例えば、多くの化粧品で頻繁に配合されるPEG(ポリエチレングリコール)。一般的に安全な成分とされています。
しかし、PEGが使われたワクチンでアナフィラキシーショックを起こした女性の事例も。本人が気づかない間に、日常的に使っていた化粧品に入っていたPEGに皮膚感作していた可能性が指摘されています。
気づかないうちに感作する可能性を減らせるように。
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*すべての方に肌刺激やアレルギーが起こらないわけではありません。