本当にやさしい化粧品を探すために
近年、化粧品に含まれる成分やその環境への影響に対して関心が高まっています。
全部で1万種類以上あるとも言われる化粧品成分。中には、肌に刺激があるものや環境に蓄積するものなど、人間や地球にやさしい成分ばかりではありません。
例えば、メタクリル酸メチルクロスポリマーという成分。
テクスチャをなめらかにし使用感がよくなるため、多くの化粧品で使用されています。機能性が高い成分ですが、安全性や環境への影響はどうなのでしょうか?
この記事ではメタクリル酸メチルクロスポリマーについて、詳しく解説します。
参考記事:パッケージがエコでも「やさしい化粧品」とは限らない
メタクリル酸メチルクロスポリマーって何?
メタクリル酸メチルクロスポリマーは、化粧品に使われる合成ポリマーのひとつ。
肌の凹凸を埋めてなめらかな感触にしてくれます。また、化粧品が分離したり品質変化が起こらないように、安定性を高める役割もあります。特にファンデーションやパウダー、プライマーなどで使われることが多い印象です。
軽いテクスチャで厚塗り感を出さず、肌の凹凸をカバー。その上、耐水性や耐久性もアップ。
自然な仕上がりと崩れにくいメイクを叶えてくれるなんて、とっても優秀な成分です。
メタクリル酸メチルクロスポリマーの肌への影響は? 安全なの?
機能的に優れているのは嬉しいですよね。
でも、安全面ではどうなのでしょう?毎日肌に塗っても大丈夫なのでしょうか?
この成分の安全性は世界的な専門機関が確認済み。それぞれ少し詳しく見てみましょう。
EWG(Environmental Working Group)による安全性評価
EWGは化粧品成分の安全性を1から10の段階で評価するアメリカの団体。1はもっともリスクが低く、10は一番リスクが高いのですが… メタクリル酸メチルクロスポリマーは低リスクの1〜2となっています。肌刺激やアレルギー性は低いんですね。日常的に使用しても、肌トラブルを引き起こす可能性は低いと言えそうです。 |
CIR(Cosmetic Ingredient Review)による安全性評価
次に世界的な安全評価機関であるCIR(Cosmetic Ingredient Review)の評価はどうでしょうか。 こちらも、メタクリル酸メチルクロスポリマーの化粧品への使用は一般的に安全と結論付けています。皮膚から吸収されにくく、長期間使用しても肌や身体には問題ないとしています。 |
メタクリル酸メチルクロスポリマーは毛穴に詰まる?
メタクリル酸メチルクロスポリマーは基本的に大きな分子。つまり、皮膚組織よりもサイズが大きいんですね。そのため皮膚の奥まで入り込むことはできません。だから、基本的には毛穴には詰まりにくいと考えられます。
しかし、肌質や使い方によっては毛穴に詰まる可能性はゼロではありません。
特に、油分を多く含む化粧品に使われた場合や十分に洗い流さない場合には毛穴詰まりの原因になることがあります。
ポリマーが皮脂を閉じ込める可能性
メタクリル酸メチルクロスポリマーは、肌表面に人工的な薄い膜を形成することがあります。
その膜が皮脂や油分の排出を妨げて、毛穴の中に皮脂がたまってしまう可能性が。
その皮脂が酸化すると角栓や毛穴の黒ずみにつながります。小鼻のポツポツなども同じ原因の場合があります。
しかも、ポリマーの膜は肌の自然なターンオーバーを邪魔することもあります。ターンオーバーが乱れると、古い角質や汚れが毛穴の中に詰まりやすくなります。そうすると、ニキビや吹き出物ができやすくなる悪循環に。
過剰な油分でニキビ
リッチなクリームやファンデーションなどには油分が多く含まれています。そうした油分は皮脂の過剰分泌を促すことがあります。
そんな化粧品にメタクリル酸メチルクロスポリマーなどの合成ポリマーが使われていた場合、ポリマーの膜が余分な皮脂や汚れをポリマーの下に閉じ込めてしまいます。
これが毛穴詰まりだけでなく、毛穴の広がりの原因になることもあります。
このような毛穴トラブルやニキビを防ぐためには正しいクレンジングが重要。
膜を作る成分が配合された化粧品を使う場合には、肌にポリマーの膜が残らないように正しいクレンジングを心がけましょう。
メタクリル酸メチルクロスポリマーによる環境への影響:「マイクロプラスチック」の問題
一般的に肌には安全と言われるメタクリル酸メチルクロスポリマー。ですが、環境への影響は見過ごすことはできません。
私たちが毎日使用する化粧品は洗い流され、水環境に流れ込みます。特に、合成ポリマーはマイクロプラスチックとして海や川に残ることが海外では懸念されています。
参考記事:化粧品のマイクロプラスチック成分に隠れている4つのリスク
メタクリル酸メチルクロスポリマーとマイクロプラスチック
メタクリル酸メチルクロスポリマーは微小な固形ポリマー。一部の製品では微粒子状で使用されることがあるため、マイクロプラスチックとみなされることがあります。
こういった合成ポリマーはヨーロッパでは「液体マイクロプラスチック」と呼ばれています。
液体マイクロプラスチックは自然には分解されにくい合成物質。長期間にわたり水中や土壌に蓄積します。
魚などの水生生物が誤って摂取してしまう可能性もあり、海洋汚染や生態系への影響が深刻な問題になってきています。
ヨーロッパのECHA(European Chemicals Agency)の見解
ヨーロッパの化学品庁であるECHAも、メタクリル酸メチルクロスポリマーなどのマイクロプラスチックによる環境への影響に懸念を示しています。
そのため、ECHAは2020年にEUでの規制を提案。意図的に添加するマイクロプラスチックの化粧品への使用を制限する動きを進めています。
メタクリル酸メチルクロスポリマーは、その形状や粒子のサイズによってはこの規制に該当するとされています。
まとめ
メタクリル酸メチルクロスポリマーは、なめらかな使用感と優れた機能性を化粧品に加えてくれます。
でもその反面、環境に与えるネガティブな影響も無視できることではありません。化粧品を選ぶときには成分表示を確認し、地球環境への配慮も忘れないようにしたいですね。
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