便利な日焼け止めスプレー
近年どんどん商品数が増えている日焼け止め。特に、お出かけ先や小さな子供にサッと使える日焼け止めスプレーは便利ですよね。楽だしお気に入り!という人もいるかもしれません。
でも実は、スプレータイプの日焼け止めには怖いリスクが。日本ではあまり知られていませんが、海外では推奨されていない場合もあるのです。
この記事では、日焼け止めスプレーが欧米では避けるようにと言われている理由について詳しく解説します。
アメリカでおすすめされていない理由
日用品や食品、化粧品に使われる原料の健康への影響を評価するEnvironmental Working Group(EWG)。アメリカのワシントンD.C.を拠点にする非営利団体で、世界中の研究機関や安全性評価に影響力を持つ団体です。
そのEWGでは。紫外線吸収剤が使われた日焼け止めは安全性の観点からNG。ノンケミカル処方の日焼け止めが推奨されています。
しかし、たとえノンケミカルであっても日焼け止めスプレーはダメ。
理由は、紫外線散乱剤を鼻や口から吸い込んだ時のリスクが高いからです。
具体的には下記のような見解が示されています。
- ノンケミカルの日焼け止めで使用される酸化チタンを肌表面に塗るのは安全。しかし、口や鼻から吸い込んだ場合は有害
- 酸化チタンを口や鼻から吸入した場合、がんのリスクを高める可能性を国際がん研究機関が示している
- ノンケミカルの日焼け止めで使用される酸化亜鉛は、吸い込んだ場合の長期的な影響がわかっていない
一般的には安全性が高いとされるノンケミカルの日焼け止め。でも、スプレータイプの場合は安全とは限らないということなんですね。
日焼け止めスプレーは意味がない?
日焼け止めスプレーをおすすめしていないもう一つの国はオーストラリア。
オーストラリアは世界で最も皮膚がんの発生率が高い国のひとつ。毎年2,000人近くが皮膚がんで亡くなっているため、日焼け対策によるがん予防の意識が高い国です。
そのオーストラリアで、がん協議会(Cancer Council)と放射線防護原子力安全庁(Australian Radiation Protection and Nuclear Safety Agency)は、スプレータイプの日焼け止めは使わないよう呼びかけています。
なぜでしょう?驚く理由がふたつあります。
日焼け止めスプレーでは確実なUV効果が期待できないかも
これは、クイーンズランド工科大学が2020年に行った調査で示されています。
市販の日焼け止めスプレー9製品を調べたところ、商品に記載のUV効果を得るには、手足で4秒から14秒間、全身だと29秒から98秒間もスプレーをかけ続ける必要があったとか。
しかもこれは、無風で環境が整った実験室で行われた結果。
実際に海や山、公園などの野外であれば、もっと長い時間スプレーし続けないと十分な紫外線予防効果が得られないそう。これでは適切な量を塗るのは難しそうですね。
もちろん日本で販売されているものは違うかもしれません。でも、オーストラリアの複数の日焼け止めスプレーで同じ結果が出ていることは事実なのです。
紫外線防止剤の含有量が半分以下?!
調査した9製品の中には、日焼け止め成分の含有量が半分以下だったものもあったとか。
それ以外の成分はスプレーに必要な噴射剤。そのため、「適切な量を塗布してください」「たっぷり塗ってください」と書かれていても、紫外線防止剤そのものがどのぐらい肌に塗布されているか、わかりようがありません。
つまり、クリームなどと同じぐらいの日焼け止め効果を得るには、大量にスプレーを吹きかける必要があるということ。ですが、調査で使用した3種類の日焼け止めスプレーでは、大人の全身に塗布する場合、1製品あたり2回しか使用できない含有量のものもあったようです。
安全性とコスパを考えると、決しておすすめできない理由も納得ですね。
日焼け止めスプレーに混入する有害物質「ベンゼン」
ベンゼンは石油由来の有毒化学物質。国際がん研究機関とアメリカの環境保護庁はヒトに対する発がん性物質と分類しています。いかなる量であっても安全ではないとされる有毒性が高い物質です。
しかし、アメリカのある独立機関が行った調査で、下記のような化粧品や日用品からベンゼンが検出されました。
- 日焼け止め
- 手指の消毒剤
- 制汗剤・デオドラント剤、抗真菌剤
- スプレータイプのシャンプーとコンディショナー
69ブランド、294製品を対象にしたこの調査では78製品からベンゼンが検出。特にスプレータイプの化粧品から最も多くのベンゼンが検出されています。
その中には、世界的大手メーカーのP&Gやジョンソン・エンド・ジョンソン社の製品も。各社が製品を回収するという騒動になり、アメリカの大手ドラッグストアでは2種類の日焼け止めの取り扱いが中止されました。
なぜベンゼンが検出?
メーカーはこれらの製品にベンゼンを意図的に配合することはありません。それなのにどうして化粧品からベンゼンが検出されたのでしょう。
実は、その理由ははっきりとわかっていません。
アメリカのFDAでは、増粘剤のカルボマーやスプレーの噴射剤「イソブテン」などが原因かもしれないという仮説が立てられているようです。
ベンゼンによるリスクは?
ベンゼンが皮膚に触れると、肌を経過し血流に入ることが知られています。また、空気中にベンゼンが高濃度に含まれている場合、吸い込んだベンゼンの約半分が肺の粘膜を通過。血流に入り全身を巡ります。
クリームタイプなど吸入リスクがない日焼け止めの場合は、ベンゼンによる有害な影響はほとんどないとされています。
しかし、上述した通りベンゼンは発がん性のリスクがある有害物質。がんの他にも、長期間吸入した場合には血液細胞を形成する組織、特に骨髄に有害な影響が出る可能性が。血液をうまく作れず、赤血球が減少するなど重大な影響を及ぼすことがあるとされています。
安心な日焼け止めの選び方
ここまで書いた内容を読んでいただくと、日焼け止めスプレーがおすすめされていない理由をわかっていただけたでしょうか
日焼け止めスプレーをどうしても使いたいという場合は、使用量や使用方法にはくれぐれも注意するのがよさそうです。
また、日焼け止めはスプレータイプを避けつつ、ノンケミカル処方のものを選びましょう。
なお、日焼け止めは2~3時間おきに塗り直さないと、十分な効果を得られないことも。UV効果がある服やつばの広い帽子、サングラス、日傘なども活用して、紫外線を防止するように心がけましょう。
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