化粧品成分と化学のチカラ
ナチュラルコスメやオーガニックコスメとして売られている化粧品。そこに配合されている成分は、自然の原料がそのまま使われているわけではありません。
自然由来のものであれば、不純物や農薬が残留しています。そのため、化粧品に安全に使用できるよう高度に精製加工されます。
また、天然由来成分といっても、自然に存在する動植物がそのまま成分となっているわけでもありません。たとえば、植物オイルから特定の脂肪酸だけを抽出して合成油を作るなど、人工的な加工が加えられていることもよくあります。
天然由来成分について:実はナチュラルじゃない!化粧品の天然由来成分
この記事で取り上げる「酢酸トコフェロール」もその一つ。天然のビタミンEに合成加工を加えた成分です。
化学物質は悪?
「化学物質は悪。自然のものしかダメ」
そんな極端なことを言うつもりはありません。安全で肌にも健康にも環境にもやさしいのなら、化学のチカラを借りることはそれほど悪いとは思えないからです。
むしろ、自然に自生する植物を乱獲して作られた自然成分よりも合成成分の方がサステナブルなこともあります。それに不純物の混入もなく、安全である可能性も。
ただ、それも成分ごとにさまざま。化学物質を混ぜ合わせることでリスクが伴う成分になる可能性もあります。
ビタミンEと酢酸で合成される酢酸トコフェロール
化粧品成分に「酢酸トコフェロール」という成分があります。ビタミンEを酢酸と混ぜ合わせて作られます。多くの化粧品で配合されていますが、どんな成分なのでしょうか?
酢酸トコフェロールはビタミンEの一種。天然のビタミンEに酢酸を加えた合成成分です。
強い抗酸化作用があるため、化粧品には酸化防止剤として配合されます。つまり化粧品の変色や変質を防ぐための成分ということですね。
加えられる酢酸は、酢の主成分。木工用接着剤や合成繊維、布地などに使われる化学物質の製造にも使用されています。
トコフェロールと酢酸トコフェロール
化粧品には、安全性が高いとされるビタミンEの成分「トコフェロール」があります。それなのに、トコフェロールにわざわざ酢酸を加えた酢酸トコフェロールがどうして存在するのでしょう。
理由はふたつ。
酢酸を加えることで製造コストが安くなるから。その上、強力な酸化防止力を発揮することで、より長期間の保存が可能に。
メーカーとしては化粧品を加工・出荷・保管・販売しやすくなるというわけですね。
酢酸トコフェロールの安全性
製品の安定性や低コストを求めるのは、メーカーの立場としては当然とも言えます。でも、そうして作られた酢酸トコフェロールの安全性はどうでしょうか?
アレルギー
2012年、日本人女性が酢酸トコフェロールにアレルギー反応を示した事例が報告されています。化粧水を使用し始めて7ヶ月後に痒みを伴う紅斑が生じたのだそう。
とはいえ、酢酸トコフェロールに対するアレルギー反応は非常にめずらしいとされています。化粧品成分の安全性を調査するCIRでも、酢酸トコフェロールは安全な成分と評価しています。
ハイドロキノンの混入
消費者のために成分の安全性を評価している米国のEWGでは、酢酸トコフェロールにハイドロキノンが混入する可能性を示しています。ハイドロキノンはアメリカやヨーロッパでは一般化粧品への配合が禁止されている成分。アレルギーや強い肌刺激、色素沈着のリスクがあると判断されているからです。
ハイドロキノンについて:美白成分のハイロドキノンは使い続けても大丈夫?
酢酸トコフェロール自体は安全でも、強力な作用がある物質が混入している可能性があるということ。その影響がゼロではない限り、少し気にはなりますね。
基本的には安全な酢酸トコフェロール
上記のような懸念があるのは確か。でも、酢酸トコフェロールが配合されているからといって過度に心配する必要はなさそうです。
ただ、同じビタミンE成分であれば、トコフェロールというより安全な選択肢もあります。敏感肌の人やより安心な化粧品を選びたい人は、わざわざ酢酸トコフェロール配合のものを使う必要もないと言えます。
自分の肌や価値観に合った化粧品を見つけられるよう、どんな成分にどんなリスクが潜んでいるのかを少し気にしてみてもいいかもしれませんね。
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