虫除けスプレーのディートは危険?

虫除けスプレーのディートは危険?

虫除けスプレーは安全なの?

ジメジメする日本の夏につきものの虫刺され。

蚊やダニに刺されるとかゆいだけでなく、国内外ではデング熱、日本脳炎、マラリア、黄熱病、ジカ熱などの病気に感染する可能性もあります。中には命に関わる病気もあるので、虫刺され対策はしたいもの。

でも、虫除けスプレーは安全なのでしょうか?特に小さな子供に使っても大丈夫なのか気になる人は多いかもしれません。

虫除けスプレーのディートは子供に使っても大丈夫?

市販の虫除けスプレーを見ると「ディート不使用」と書かれたものが増加中。でも、一体ディートってなんでしょう?

この記事では虫除けスプレーに使われるディートとその安全性を徹底解説。安心して虫刺されを防止するヒントにしていただけると嬉しいです。

ディートとは

ディートは多くの虫除け剤で使われている有効成分。DEETやN,N-ジエチル-メタ-トルアミドとも呼ばれます。

黄色っぽい液体で、肌や衣服に塗布することで蚊、ダニ、ハエ、ノミなどに安定した効果を発揮。虫を殺す殺虫剤とは違い、虫が寄りつかないようにしたり、刺されないように肌を守ってくれる効果があります。

使用され始めたのは1950年代。

何千種類もの化学物質をテストした結果、もっとも虫除け効果が高かった物質の一つがディートだったそう。現在も日本だけでなく、アメリカやカナダなど多くの国で虫除けスプレーに使用されています。

虫除けの有効成分として使われるディート

ディートは危険?

虫除けスプレーに書かれた「ディート不使用」を見ると、ディートは避けるべき危険な物質と思う人もいるかもしれません。ここからは、今までにわかっていることを見てみましょう。

健康被害発生率は1億分の1

ディートの安全性について網羅的に検証したアメリカの環境保護庁のレポート。このレポートでは、ディートに関連する可能性がある中毒が46件、死亡が4件報告されたとしています。

件数だけで見ると多いようにも思えます。でも、これは1960年以降の発症数の合計。膨大な数の使用人数と回数にもかかわらず50件の報告数というのは、割合としては非常に低いのです。

このレポートでも、ディートに関連する可能性のある健康被害の発生率は1億分の1であると推定されました。

健康被害の原因は誤用

ディートの影響で脳炎や昏睡、死亡の報告があるのは事実。しかし、これらの症状は高濃度(47.5%〜95%)のディートを飲んだことにより発生しています。

虫除けスプレーを飲むという行為は想定されていませんよね。それなのに、誤用による死亡例がきっかけでディートを避ける人が増えてしまったようです。 

ディートの健康被害の多くは誤飲によるもの

DDTと混同されている

現在、日本やヨーロッパなどで禁止されているDDTという化学殺虫剤。ガンや先天性欠損症を引き起こす可能性が指摘されている物質です。ディート(DEET)と名前が似ているため、混同した情報が出回っていることがあります。

ヨーロッパでの規制にも情報が不十分

ヨーロッパでは2012年に虫除け剤へのディートの使用が認められました。しかし、その後2016年にスウェーデンが神経毒性の可能性を指摘。EUでは規制対象にするべきとした提案を提出しました。ただ、神経毒性を示す明らかな証拠が不十分とされています。

現在、ヨーロッパではディートの配合濃度は15%までに制限されていますが、完全な禁止には至っていません。

また、神経毒性のリスクが指摘されたのは経口暴露(口からの摂取)の場合。肌に塗布した場合のリスクではありません。虫除けスプレーを誤飲しなければ大丈夫そうですね。

発がん性物質には分類されていない

ディートの発がん性を示す証拠もありません。アメリカの環境保護庁や国際がん研究機関など、世界のどの主要な機関においても発がん性物質に分類されていません。

子供に使っても大丈夫?

上述した通り、ディートによって健康被害が生じるのは誤飲や誤用による場合がほとんど。メーカーが記載する使用方法に従った場合、皮膚や身体への健康リスクは非常に低いとされています。

虫除けスプレーのディートは子供に使っても安全とされています

それでも「ディートは危険!」というイメージが世界中に広がったのは、1980年代初頭から1990年代後半にかけて。
脳障害を発症した8歳以下の子供の13例でディートに関連する可能性が指摘されたことが発端でした。13人のうち3人が死亡(11人は完全に回復)したことで一気に避けられるようになったのです。

しかし、これらの死亡にディートが直接関係していたかどうかは不明。30年以上経った今でも決定的には証明されていません。

こういう事例を知ると「確かに怖いかも」と思う人もいるかもしれません。どのような化学物質でも誤った使い方をすればリスクが高まるのは当然です。

ただ、ディートの推定使用件数は年間1億件。10年以上の間に14件で「健康被害の可能性がある」というのは、非常に低い割合というのが一般的な見解です。

なお、より新しい2014年の調査では、使用方法に従って使った場合の副作用などは認められないとされています。

ディートは妊婦に安全?

妊婦や胎児への影響を調査した研究はほとんどありません。ただ、色々なところで怖い情報に触れることはあります。例えば、こんな情報。

  • 妊娠中のラットが高用量のディートにさらされると、その子供の出生体重が低くなる
  • 妊娠中にディートを使用した3人以上の女性が重度の先天性欠損症の赤ちゃんを出産。そのうち1人は死亡。

確かに怖い情報ですが、調査対象がラットと3人以上の妊婦。これだけで危険というには情報が不十分すぎます。

一方、米国ニュージャージー州での研究(女性150人)タイでの研究(女性897人)。合計1000人以上の妊婦への調査結果を見てみましょう。

これらによると、ディートは胎盤を通過して子宮に侵入することがわかりました。ただ、その濃度はごくわずか。

どちらの研究でも、ディートを使用した母親から生まれた子供は、使用しなかった母親の子供と比べても体重の減少や病気は見られませんでした。また、認知障害や重大な先天性欠損症を患うこともなかったとされました。

ディートは妊婦も安心して使えるとされています

ディートは環境にやさしい?

ディート配合の虫除けスプレーを噴射するとディートは空気中に舞い上がります。しかしアメリカ疾病予防管理センターによれば、日光や空気中の他の化学物質によってディートは分解。5時間後には半分のディートが消滅するとしています。

肌に付着したディートは、シャワーや入浴、衣服の洗濯の際に肌や衣服から洗い流されます。排水後は好気性微生物によって分解され、環境中に長く留まることはないそうです。

ディートの代わりになる虫除け剤

ここまで書いてきたとおり、ディートは正しく使えば危険なものではなさそう。それでもディートを使いたくないという人には、他の虫除け剤を紹介します。

イカリジン

イカリジンは、コショウ科の植物に含まれる分子を模した虫除け剤。1986年にドイツで開発されました。米国では2005年から、日本でも2015年から虫除け剤として使用が認められています。

まだ使用歴が短い上、安全性に関する研究や調査はディートほどは行われていません。

ただ、これまでの研究調査では安全であることが示されているため、世界保健機関やアメリカ疾病予防管理センターなどはイカリジンの使用を推奨しているようです。

ユーカリレモン油

濃度30%以上のユーカリレモン油にも虫除け効果があるとされています。ただ、アレルギーリスクがある精油のため、3歳未満の子どもには推奨されていません。3歳以上の子供の場合は、使用方法に従えば安全で効果もあると認められています。

まとめ

一般的に広まっている噂の根拠がなんなのか。改めて調べてみると意外な事実ことがわかりました。

ディートに限らず、他の虫除け成分にも天然の精油にも、使い方や使う頻度、濃度によってそれぞれにリスクがあります。自分や大切な人が安心して使えるものを選ぶときは、正しい情報に基づいて正しい選択をしたいものですね。

 

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