健康な3人の男の子の乳房が女性化
2007年に発表された論文に、衝撃的な内容が書かれています。
それは思春期前の男の子3人の胸に女性化が見られたというもの。
男の子の年齢はそれぞれ4歳、7歳、10歳。
さらに驚くのはその原因です。
ラベンダーとティーツリーの精油が配合された化粧品の可能性が示唆されているのです。つまり、それらを繰り返し肌に塗ったことで乳房の女性化が引き起こされたかもしれないということです。
「天然由来の精油」
「オーガニックのエッセンシャルオイル」
肌や健康にいいイメージを精油に持つ人は少なくありません。
でも実は、天然の精油にこそ存在するリスクもあるのです。
この記事では、論文の内容を少し詳しく解説してみたいと思います。
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ラベンダー油配合の化粧品が原因?
男性の乳房女性化は、体内の女性ホルモン「エストロゲン」が極度に活性化した時に起こる可能性があります。
でも、この論文調査の対象となった3人の男の子の血清濃度は正常。乳房の女性化の原因となりうる異常はありませんでした。
そこで、それぞれの男児について詳しく調査。
すると、3人ともラベンダー油が配合された化粧品を使用していたことが判明しました。そして、その化粧品の使用をやめたら、乳房が正常に戻ったこともわかりました。
3人の男児の詳細は下記の通りです。
男児①
- 年齢:4歳5ヶ月
- 症状:乳房の女性化が2〜3週間継続
- 軟膏やサプリメントなどの外因性エストロゲンとの接触はない
- 直径2.5cmの乳房蕾があり膨らみがあった。触ると痛がった
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ラベンダー油が配合されたバームを母親が男児の皮膚に塗布していた
- バームの使用をやめてから4ヶ月ほどで乳房蕾は少しずつ小さくなり、数ヶ月後には完全に消失した
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男児②
- 年齢:10歳1ヶ月
- 症状:乳房の女性化が5ヶ月間継続
- 薬やサプリメントの使用はない
- 直径3.5cmの乳房蕾があり、夕方のほうがふくらみが目立つ(朝は少し軽減する)
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ラベンダー油とティーツリー油が配合されたスタイリングジェルを髪と頭皮に塗布していた
- ジェルの使用をやめてから9ヶ月後には、ふくらみが減少した
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男児③
- 年齢:7歳10ヶ月
- 症状:1ヶ月かけて乳房の女性化が出現
- 両側の乳房組織が硬くなっていた
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ラベンダーの香りがする石鹸とローションを使用していた
- 石鹸とローションの使用をやめてから数ヶ月後に乳房のふくらみは完全に消失した
- 二卵性の双子の兄も同じローションを使用していたが、石鹸は不使用。兄には乳房の女性化は見られなかった
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女性ホルモンが過剰に作用する原因
肌に塗った物質が皮膚を浸透し、体内のホルモンに作用してしまうことがあります。
「内分泌かく乱物質」と呼ばれるものです。
化粧品成分では、パラベンやメトキシケイヒ酸エチルヘキシルなどが該当するとされています。
その他にも、ステロイド剤などの医薬品、経口避妊薬、マリファナ、大豆製品など、外因性の内分泌かく乱物質とされるものは少なくありません。
しかし、今回調査された3人の男児は、こうした物質とは無関係でした。
そして、3人が唯一共通して使っていたのがラベンダー油。
特に男児①では唯一使用していた外用薬はラベンダー油のみです。そのため、それが調査を進める手掛かりになったと記載されています。
調査が示すラベンダー油のリスク
ラベンダー油とティーツリー油が配合された化粧品の使用をやめると、男児の乳房の女性化は数ヶ月以内に消失しました。
つまり、これらの精油が内分泌かく乱物質である可能性が示されたのです。
具体的には
「女性ホルモンであるエストロゲンと男性ホルモンであるアンドロゲンの間のシグナル伝達のバランスを崩してしまうかもしれない」
と論文には書かれています。
こうした詳しい調査と3人の男児の臨床観察から、論文は下記のように結論づけました。
「男児の乳房女性化は、ラベンダー油とティーツリー油を日常的に繰り返し肌に塗っていたことによって引き起こされた」
さいごに
精油は、シャンプーや保湿剤・スキンケア製品など多くの化粧品に配合されています。
ラベンダー油が思春期前の少女や思春期の女児、あるいは成人女性において、同じように内分泌かく乱作用を引き起こすかどうかはわかっていません。
また、これらの精油にどのぐらいの頻度や濃度で接触すれば、こうした症状が出るのかもまだわかっていません。そのため、ラベンダー油と男児の乳房女性化の関連性については、さらに研究調査が必要だとされています。
誤解しないでほしいのは、この記事を読んで、やみくもに精油を避けてほしいと言っているわけではありません。
ただ、精油には思わぬ作用があるかもしれないということ。そして、ラベンダー油が体内のホルモンバランスを乱す可能性があるということを知り、過度な使用には注意するのがいいかもしれません。