虫が原料の化粧品成分
アイシャドウやチーク、口紅、色付きリップなどに「カルミン」という成分が入っていることがあります。カルミンは天然由来の着色剤。天然由来といっても、植物が原料ではありません。コチニールカイガラムシという虫が原料の着色剤です。
食品では「コチニール色素」という名前で添加物として使われます。
カルミンの原料「カイガラムシ」とは
カイガラムシは中南米に生息する昆虫。現在は主にペルーやカナリア諸島のウチワサボテン農場で採集されます。
虫なのになぜサボテン農場?と不思議に思う人もいるかもしれません。実は、カイガラムシはサボテンの葉にくっついたまま、ほとんど動くことなく一生を過ごす虫なのです。
カルミンの最大の輸出国はペルー。全世界で3000トン消費されるカルミンの90%がペルー産です。約450gのカルミンを作るのに7万匹のカイガラムシが必要ということを考えると、すさまじい数の虫が使われていますね。
カイガラムシからカルミンがどう作られるか
カイガラムシから取れるカルミン。染料としての歴史は長く、数百年以上にわたって使用されてきたのだとか。発色がよく、鮮やかな赤やピンク色を演出できるため重宝されてきたのです。
でも、下の写真のようにカルミンの色は灰色。しかもサボテンにくっついている時には白い保護粉がに覆われています。
一体どうすれば、このカルミンから赤い着色剤を作れるのでしょうか?
まず、収穫したサボテンを倉庫で保管します。その後は、サボテンからカイガラムシをはがす作業。サボテンの中までもぐり込んで生息しているため、サボテンから引き抜かないといけないそうです。
そうして集めた虫を選別。カルミンに使用されるのはカイガラムシのメスだけなので、原料となるメスだけを選びます。そして天日干し。
しっかり干した後に粉砕すると、カイガラムシの体内に蓄積されていた鮮やかな赤色が現れます。サボテンにくっついていた時の外見からは想像できないほどの鮮やかな赤です。
砕かれた後は酸性のエタノールに混ぜ合わされます。他の成分が入った溶液と混ぜて特定の色を作ったり、水や流動性物質と混ぜて様々な赤色の色素が作られます。
なぜカルミンが化粧品に使われるの?
上述したとおり、カルミンは砕かれるととても鮮やかな赤色になります。その色をアイシャドウやリップ、チークなどに活用しているのです。
最近は、合成着色剤が避けられることが増えてきました。そのため、合成の着色剤を使わずに消費者が求める赤や紫、ピンクの色を調合できる「天然の着色剤」として重宝されているのです。天然由来ですから「ナチュラル」や「自然派」のメイクアップブランドにはありがたいのですね。
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カルミンは動物由来
虫が原料のカルミンは動物由来です。そのため、ヴィーガンではありません。ヴィーガンの選択をしたい場合は、カルミン配合のメイクアップ製品は避けましょう。
ただし、カルミンが使われないヴィーガンコスメの場合、合成着色剤が使われている可能性も。発色のよさを優先したいのか、天然か合成かなどの由来を優先したいのか。自分の価値観に合わせて選ぶのがよさそうです。
カルミン以外に天然着色剤はある?
カルミンのようなピンクや赤の色調を実現できる天然由来の着色剤は、他にはほとんどありません。
例えば、酸化鉄も天然由来の着色剤です。暖色系やオレンジ系、赤や茶色、黒など様々な色を作ることはできますが、カルミンで作れる鮮やかな赤やピンクの色調を酸化鉄だけで再現するのは難しいようです。
そこでマイカなどを加えて、赤、ピンク、紫の色合いを表現。カルミンに代わるほどの発色ではないものの、今のところナチュラルなビューティーブランドにとってはこの組み合わせがベストとされているようです。
また、フルーツ顔料と呼ばれるような他の天然着色剤もあります。
ビーツやムラサキイモなど色の濃い果物や野菜を原料とした着色剤です。中にはメイクにふさわしいような深い赤や紫の色を作れるものもあります。
しかし、水性処方でのみ使用できるるため、油分を含む口紅などのメイク製品では使うことができません。加えて、フルーツ顔料はその鮮やかな色を長期間維持することも不可能。化粧品などに配合した後に酸化し、茶色く変色してしまうからです。
というわけで、カルミンは天然由来ながら、化粧品に求められる鮮やかなピンクや赤の色調を作れ、安定してその色をキープできる珍しい成分と言えるのです。
食品にも使われる
カルミンが使われるのは化粧品だけではありません。いちごヨーグルトやジャム、ジュース、お酒、お菓子、ハム・ソーセージなど、多くの食品にも使われています。
食品での表示名は「コチニール色素」。市販の食品だけでなくスターバックスで人気のイチゴのフラペチーノがカルミンで着色されていたことも話題になりました。
カルミンによるアレルギー
色々なものに使われているカルミンには、アレルギーのリスクはあるのでしょうか?
頻繁に起こるわけではありませんが、深刻なアレルギーを引き起こす可能性は示されています。
アレルギー症状は軽いかゆみや目の充血といった軽い場合がほとんど。ですが、まぶたや喉がひどく腫れたり、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状に発展することがあることもわかっています。
2018年の報告では、日本人女性で22名の発症例があるとされています。そのうち3件を除く事例でアナフィラキシーショック、13件で化粧品使用による症状が見られたことが示されています。
また、じんましんが出やすい人は特に注意が必要。110人の被験者のうち22人に皮膚アレルギーの可能性が示唆された研究もあります。
自分の肌や価値観に合う化粧品を見つけるのは難しいですよね。
でも、成分に関する知識を少し身につけておけば、いいものに巡り合えるチャンスも増えるかもしれません。
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